異次元の創作時間

 小腹が空いて目が覚めてしまった。明かりをつけるとまだ真夜中だった。1時間も眠っていない。何か口にするなら体によいものの方が、罪悪感が少ない。冷蔵庫を開けるとちょうど未開封のヨーグルトがあった。スプーンとプレーン・ヨーグルトの箱を持って、テーブルについた。
 中身が飛び出さないようにヨーグルトの蓋を慎重に開けた。すると、中でおじいさんが机について煙草をふかしていた。深夜からの時間帯は、レンタルスペースになっていると言う。そんな馬鹿な話は聞いたこともない。年寄りのハッタリに違いない。


「出て行ってくれ!」


「真夜中にヨーグルトか?」
 おじいさんの口から吐き出される灰色の煙が、狭い部屋中に広がる。


「俺のだ!」


 強く叫ぶとおじいさんはすっと立ち上がった。机と椅子を抱えてヨーグルトから出て行くと、腰を屈めて冷蔵庫の下の隙間に消えていった。こちらとしても、それ以上の追跡は無用だ。
 プレーン・ヨーグルトは、おじいさんの重みで箱の半分ほどまで凹んでいた。けれども、その表面には足跡1つもなく、奇妙なまでにフラットだった。