ヒット・マン

 俺たちの描くハードボイルド。スタントは一切なしが鉄のルールだ。俺は筋金入りの殺し屋。いつだって何らかの勢力に追われている。追うのならば俺の右に出る者はいない。一度定めた狙いを俺は外さない。信念は何があっても貫き通す。いかなる雨も嵐も俺の信念を足止めすることはできない。朝食はトースト1枚切り。チーズがあれば上にのせる。なければトースト1枚切りだ。家族はいない。俺は非情に徹することができる。愛する煙草は1日50本は当たり前。俺は本物のヘビースモーカーだ。いつだって煙草と拳銃を手放さない。勿論、どちらも本物だ。俺たちの描くハードボイルド。目指すところはいつだってナンバー・ワン。さあ、そろそろ始めるとするか。


「景気付けに1発行くかい? 役者は揃ったか? どこだい? 監督。監督さんよ……」


バーン!


「そんな……。こんなことって……。俺は主役。どうして?」


「さて、お集まりのみなさん。邪魔者は消しました。彼はとても危険な男でした。彼一人で何人もの役者が消されてしまうとこでした」


 殺し屋の納まった棺桶の上に花束が捧げられた。それを機に監督は大幅な路線変更を発表した。バイオレンスを改めてハートフルコメディだ。役者たちの歓迎の拍手が村中に響いた。


「ジャンルを間違えては話にならない。その時点で、the end 。時代の主役は、みなさんすべてです!」